身近な医療情報
強迫性障害について
強迫性障害(古くは強迫神経症でした)は不安障害の一種です。人間は、不安を感じながら生活していると思います。生活していくうえで毎日が不安でいっぱいなことでしょう。不安と恐怖は近い関係にあり、対象のある不安を恐怖と呼んでいます。また、不安を避けるための過剰な考えを強迫観念と呼び、不安を避けるための過剰な行動を強迫行動と呼んでいます。汚染される恐怖のために手洗いを過剰に行い、また、家を守るための強い気持ちから、家のドア鍵の確認などの行為を繰り返します。手洗いや戸締り確認などの行為を行わないと、強い不安が生じてしまいます。
考えや行為のために時間を費やし、その状況を回避することから社会活動が妨げられるため、生活に支障が出たり、苦痛が生じ、時には落ち込みます。
症状と治療
「現実にはありえない」とわかっていても、繰り返し頭の中に、考えが生じて、振り払うことができないものです。例えば「ばい菌が広がって体中が汚染されてしまうのではないか、人を傷つけてしまったのではないか」などが頭の中にこびりつきます。この考えは強迫観念と呼ばれています。
また、「必要ない」と分かっていて止めようとしても、繰り返し行ってしまう行動(必要以上に戸締りや火の元を確認するなど)があり、これらは強迫行為と呼ばれています。症状がひどくなると、家族などに確認を求めたり生活に悪影響がでます。
現在では、有効な治療方法として薬物療法と行動療法が用いられています。薬物ではSSRI(抗うつ薬の1種)による治療が中心です。行動療法では、曝露反応妨害法があり、これは、薬剤の投与などを十分に行ったうえで、強迫観念の引き金となる刺激に徐々にならし、強迫行為をとらなくても不安が生じないことを体験していくものです。これを繰り返すことで、不安が減じていきます。
薬物療法と行動療法を適切に行えば、生活に支障のないレベルまでは至ることは可能と思われます。
ハートクリニック町田 樋口 雅朗 先生