耳鼻科のウソ？ホント？素朴な疑問集

　皆さんは耳鼻科にどのようなイメージをおもちでしょうか？「額に丸い鏡を付けている」「ちょっと怖くて苦手」など様々あると思います。今回は患者さんとの会話や質問をヒントにして、「耳鼻科のウソ？ホント？素朴な疑問集」を作ってみました。いくつか思い当たる話があるのではないでしょうか？

●風邪を引いた時は、耳鼻科に行くと早く治るらしい
答：ウソ、何科でも同じ
　カゼの原因は殆どがウィルス感染です。ウィルスは細菌よりも小さな微生物で、特効薬はありません。症状を抑えるような治療が基本になります。つまりこの時期では、何科を受診しても回復に差はありません。ただ、ウィルス感染がこじれると細菌感染を併発し、喉に白い膿が付いたり、黄色の鼻が出てきます。細菌感染では抗生剤が有効です。つまり「初期のウィルス感染で内科を受診→特効薬はなく改善しない→その後細菌感染を併発、鼻が黄色くなって耳鼻科を受診→たまたま抗生剤を処方されて改善＝アレッ、なんか耳鼻科の方がいいじゃん！」というパターンは考えられるかもしれません。ちょっと無理矢理ですが…。

●プールの水が入ると、中耳炎になりやすいの？
答：ウソ
　プールの水が入って中耳炎を起こすのは、一部の例外を除いてありません。中耳炎は通常カゼから起こります。鼻や喉のバイ菌が、耳管という耳につながっている細い管から入り込んで炎症を起こします。「一部の例外」というのは、鼓膜に穴が空いている場合です。穴を通して水が奥に入ってしまえば中耳炎を起こすことがあります。そういえば、昔の「世界びっくり人間」みたいなＴＶ番組で、タバコを吸って、その煙を耳から出しているオジさんがいました。その時は「スゴい！」と思いましたが、今思えば鼓膜に穴があいてたんですね。要するに単なる病気…。

●エッチなことを考えると鼻血が出るのはホント？
答：ウソ
　よくマンガやアニメで見られるシーンですね！興奮して顔が紅潮して血のめぐりが良くなるようなイメージですが、耳鼻科的な根拠は何もありません。鼻血にまつわるウワサはいろいろあって、「後頭部を叩くと良い」というのもありますが、これも全く意味がありません。頭がクラクラするだけですね…。鼻血の出血源は殆どが入り口付近です。急に出ることもありますが、とりあえず鼻をつまんで下を向きましょう。上を向いてしまうと、鼻から回った血を飲み込んでしまい気分が悪くなります。20～30分おさえても止まらないようなら耳鼻科を受診しましょう。

●鼻炎があるんだけどペットを飼っても大丈夫？
答：検査をやって医師を含めてみんなで考えましょう
　花粉症やアレルギー性鼻炎をおもちの場合、犬や猫に対するアレルギーもみつかることがあるので、血液検査をお勧めしています。結果が陽性の場合、飼育によって何らかのアレルギー反応が起こるリスクが生じます。「毛のあるペットはやめた方がよい」のは事実だと思います。ただバッサリ完全否定するのも問題で、以前に小学生の女の子に「ネコちゃんは検査が陽性だったから、毛のないカメとかワニにしたら」と話したとたんに号泣されてしまったことがあります。お子さんたちからすれば、飼育できるか否かは非常に重要で、かつデリケートな問題でもあります。最終的には家族会議で決めていただいています。

●耳鼻科医でもお産はできるの？
答：一応可能だがやらない、というか絶対できない
　そもそも医者が何科を専門にするのかは、個人の判断に任されています。また、途中で科を変えることもできます。私は耳鼻科一筋ですが、例えば明日から産婦人科の看板を掲げても、オッケーです。あくまで理論上ですが、お産は可能です。でも経験が全くないので、恐ろしくて手が出せません。実際はありえないことですね。妊婦さんからしても、昨日まで耳鼻科だったところで大切なお産を委ねる人はいないでしょう。

●耳あかを取ってもらうだけで耳鼻科を受診してもいいの？
答：全く問題ありません。ぜひいらしてください。
　家での耳掃除は限界があると思います。暗くて見えにくいし、どこまでやっていいかわからない。特に小さいお子さんだと動いたりして何となく怖いですね。そのような時は遠慮なく受診なさってください。耳あかを取るのは耳鼻科の仕事です。単純に耳掃除だけで終わることが多いのですが、耳あかを取った後に、奥にある鼓膜をキチンと見ることが重要だと思っています。頻度は低いですが、実はやっかいな中耳炎だったというケースがあります。

　以上、思いつくままに何の脈絡もなく書き連ねてしまいました。今回はボツになったネタも多数あります。また機会があればご紹介したいと思います。

山本耳鼻咽喉科・町田市立小・中学校　耳鼻咽喉科校医　山本　一博 先生
（「学校保健」2016年10月13日号より転載）