身近な医療情報
小児の頭痛について
頭痛は自覚的な症状で、本人の訴え以外に頭痛を診断することは困難です。大人でさえ、頭痛を正確に把握することは容易ではありませんが、子どもは自分の症状をうまく言えなかったり、表現方法が未熟で誤解を招いたりすることもあり、頭痛を正確にとらえることは極めて困難です。子どもの頭痛は時間が短く、頭痛発作時以外は普段と変わりがないため診断が難しく、家族や学校の理解がないと、勉強に対する意欲の低下や不登校につながりかねません。正しい理解と適切な対処が重要です。
子どもの頭痛について
頭痛は学校でよくみられる訴えの一つです。保健室の利用や欠席の原因、またクラスメートとの問題、学校のストレスなどと関連している場合があり、適切な対応がないと勉強や学校生活に支障をきたすこともありえます。
例えば風邪の症状として発熱を伴う頭痛のときは保健室で休ませてもらえますが、授業中に片頭痛が起きたとき、とてもつらいのに、逃避のためと疑われたり、通常発熱がないため保健室から教室に戻されたりすることもあります。片頭痛の持続時間は2~3時間と比較的短く、運動で増悪するため、片頭痛で来室した生徒にはカーテンなどして静かに寝かせることで回復が期待できます。周囲の大人が子どもの頭痛に注意を払い、担任の先生や養護教諭の理解を求めることが大切です。場合によりますが、頭痛が起きたとき、保健室などで休ませることが必要であると、医師から“頭痛持ち証明書”を書いてもらうなどの方法もあります。頭痛が原因で不登校になる子どもも存在するため、特に先生や周囲の大人の理解が必要不可欠です。
子どもの頭痛の原因について
頭痛は、原因疾患のない一次性頭痛と原因疾患のある二次性頭痛に分けられます。
一次性頭痛で圧倒的に多いのは、片頭痛で全体の3/4を占めます。ほかは、肩こりや眼精疲労からくる緊張性頭痛がほとんどですが、3%に原因のある二次性頭痛が存在します。二次性頭痛は緊急治療が必要で見逃してはいけない頭痛で、脳腫瘍や脳出血、水頭症などが含まれ画像診断(頭部CT、MRI)が果たす役割が非常に大きいことが特徴です。(図1参照)
以下、頻度の多い片頭痛を中心に説明いたします。
子どもの片頭痛の特徴
大人の片頭痛と子どもの片頭痛は、少し異なります。特徴としては、(1)頭痛持続時間が2~3時間からと短い、(2)頭痛部位が両側性である場合が多い、(3)腹部症状が多いなどです。頭痛は強いのですが、治ると平然としており、また、光過敏などの症状もうまく伝えられないことから、サボっていると思われてしまうことが多いのです。
片頭痛に関連して起こる症状
以下の4つの症状は片頭痛に関連して起こり、「片頭痛に関連する周期性症候群」と呼ばれています。子どもに多くみられます。
片頭痛に関連する周期性症候群
1.周期性嘔吐症候群
悪心と嘔吐が持続的・周期的に起こり、発作のないときにはまったく正常です。食あたりと似ていて注意が必要です。
2.腹部片頭痛
強い腹痛で、食欲不振、悪心、嘔吐、顔面蒼白などを伴います。腹部症状で始まり成長とともに片頭痛が起こってくることが多いと報告があります。
3.良性発作性めまい
急に起こるぐるぐる回転するめまいで、短時間で自然に治ります。
4.良性発作性斜頸
頭が左右どちらかに傾いて、数分から数日間で自然に治る発作が毎月のように起こります。生後1年以内に起こり、将来片頭痛に移行することもあります。
子どもはうまく症状を伝えることが難しく、まぶしい光の場所を嫌がる、音に敏感で不機嫌になるなどの行動からも片頭痛を疑うことが大切です。
遺伝的背景
片頭痛のあるご両親からよく質問されます。片頭痛には元来家族歴があることはよく知られ、とくに母親が片頭痛だと、娘も片頭痛になる確率が高いことがわかっています。双子のお子さんで二卵性より一卵性で片頭痛の一致率が高いことも有名で、多くの研究から複数の環境因子、遺伝因子が関連する多因子性疾患と考えられています。
生活習慣
頭痛の治療として薬による治療以前に、規則正しい生活習慣がとても大切です。生活を変えることで頭痛が良くなるお子さんもいます。中でも睡眠不足にならないよう注意が必要で、特に最近は深夜まで携帯電話やゲームをしているお子さんが多くみられ、周囲の大人の注意、観察が必要です。今一度、お子さんの生活習慣を振り返ってみましょう。
なかはら脳神経クリニック 中原 邦晶 先生
(「学校保健」2017年10月10日号より転載)