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がんの痛みを我慢しないで
今や、日本人の1/2の人ががんになるという時代です。そして、早期がんでもがんの治療を受けている人の1/3に痛みがあるといわれています。
がんの痛みに対して、メインで使われているのが医療用麻薬ですが、日本での医療用麻薬の使用量は少ないのが現状です。以前より増えてきてはいるものの、まだまだ欧米に比べると1/5~1/10程度。
それは、痛みを我慢することを美徳とする日本文化や、麻薬というと「中毒や依存症になる」、「寿命が縮まる」、「末期の患者さんだけが使うもの」などというイメージを持ち、医療用麻薬の使用をためらう方が多いことが背景にあるようです。しかし、それらのイメージは全く根拠のないものです。
医療用麻薬は国の厳格な基準を満たした薬です。強い痛みがある状態で適切に使用すると、中毒や依存症にならないことがわかっています。 また、医療用麻薬を使用すると寿命が短くなるどころか、痛みを我慢せず、適切に医療用麻薬を使用した方が生存期間が長いという研究結果があります。
痛みは心と体の大きなストレスになります。痛みを我慢することで、体にストレスを与え、さらに痛みが強くなるという痛みの悪循環を形成するのです。痛みがひどくなる前にしっかり痛みをとっていくことが必要です。
もちろん、他の薬と同様に医療用麻薬も副作用ゼロというわけにはいきません。主な副作用は便秘、吐き気、眠気です。便秘には下剤を、吐き気には吐き気止めを使用し、副作用が出にくいように調整します。
がんの痛みは、医療用麻薬を含む痛み止め(いろいろな種類があり、併用することが多いです)を適切に使用することで90%以上抑えられます。 もう、痛みを我慢する必要はありません。
南町田はなクリニック 大西 聖子 先生