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貧血を甘く見ていませんか?
貧血を若い頃に指摘された経験のある女性は、かなり多いと思います。実際に、月経に伴う生理出血のため、約半数の女性が鉄欠乏状態にあり、40代の女性に限れば4人に1人が鉄欠乏性貧血であると報告されています。このような状況ですので、貧血を指摘されるのに慣れてしまって、詳しい検査・治療を受けずに放置してしまっている方も結構多いのではないでしょうか?
ここで、貧血について簡単に説明しましょう。貧血とは、血液中の赤血球が不足している状態を指す医学用語で、日常生活でよく使われる「脳貧血」とは全く別の医学的な疾患名です。実際には赤血球中にあるヘモグロビンという蛋白質の量で評価し、男性は13g/dL、女性は11g/dL以下で貧血と診断されます。貧血の中には、骨髄での赤血球造血が減ってしまう再生不良性貧血や骨髄異形成症候群など血液内科での専門的な治療を要する特殊な貧血もありますが、やはり多いのは上でも述べている鉄欠乏性貧血です。
それでは鉄欠乏になる原因にはどんなものがあるでしょうか。女性の鉄欠乏性貧血の原因としては生理出血が、男性の場合は消化管出血(胃、十二指腸、大腸などからの出血)が多いのは確かですが、月経のある若い女性であっても、月経以外の出血がないとは誰にも言い切れません! 30代や40代の女性が鉄剤の補充を受けてもなかなか鉄欠乏性貧血が改善せず、胃カメラをしてみたら胃がんが見つかった、という例が実際にあるのです。月経以外の鉄欠乏の原因は主に消化管出血なので、貧血が指摘されたら、まずは胃カメラ(胃や十二指腸からの出血をチェック)と便潜血検査(大腸からの出血をチェック)の両方を必ず受けるようにしてください。また、通常よりも生理出血が多い過多月経の場合は、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患が隠れていることがありますので、女性の場合は婦人科を併せて受診することをお勧めします。
ここまで女性の貧血について強調して述べてきましたが、当然、男性の貧血についても同じことが言えます。骨髄異形成症候群などの骨髄不全症の頻度が加齢に伴い増加するのは確かですが、頻度としてはかなり稀です。通常の加齢で貧血が進行するということはありませんので、貧血が認められた際には、消化管出血などの出血性疾患が隠れていることが非常に多いです。貧血と言われたら、上記の消化管出血をチェックする検査を必ず受けましょう。痔があるからと言って、ほかの部位からの出血がないとは言い切れないですからね!
牧内科医院 牧 和宏 先生