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慢性便秘症は、もはや国民病?!

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慢性便秘症は、もはや国民病?!

 高齢化や生活習慣の変化により「便秘」を訴える方は非常に増加しています。ただ「便秘」という言葉は主観的に使われることが多く、その正確な定義はあまり考えなかったのではないでしょうか?最近定義付けがなされ、日本のガイドラインでは【本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態】と定義されています。つまり通常大腸内には生理的に残留している便があり、生理的範囲を超える便が貯留しないようにしているのが正常な排便で、過度の便が貯留していなければ排便がなくても異常ではありません。一律に排便回数や排便量で決めるものではないのです。そして腹部膨満感や腹痛、排便困難感や肛門のつまり感等が出現し治療を要するのが「便秘症」です。


 高齢者で圧倒的に多いのは「便が硬くて出づらい」という方です。反対に若年者で多いのはOTC薬の使用頻度が高く、特に刺激性下剤を適切に使用しなかったため難治性便秘症になっている方です。また様々な薬が便秘の原因になります。降圧利尿剤、抗うつ薬、パーキンソン病の薬、鉄剤等です。高齢患者さんの多くが複数の服薬をしているのが現状です。  そして大腸がん、パーキンソン病、糖尿病、甲状腺機能低下症等の疾患が二次性に便秘を起こし、女性の場合は月経周期や妊娠に伴うものがあります。但し、貧血や血便がある、体重が減る、家族に大腸がんの方が多いという場合には一度は大腸内視鏡検査をされることをお勧めします。基本的に高齢の患者さんでは便を出すことを優先に考え、便を柔らかくする薬をメインに刺激性下剤は頓服にします。


 生活習慣に関しては、まず食事や運動かと思われがちですが実はトイレの排便環境の整備も重要と言われています。便秘の方は便意がないので、まずトイレに行くこと。実は食事に関しては今のところ確立されたエビデンスはなく食物繊維の摂取量が元々少なくて便秘症になっている方には効果がある一方、十分に食べている方がさらに増やしても改善は難しい。ただ、朝ごはんを食べること、睡眠を十分にとることは大切です。


 便秘症の方は、最初はトイレを我慢することから始まります。「朝食を食べた後トイレに行ってから仕事に行ってください」と言いましても特に女性の場合は無理な方が多く、昼間の会社なんて論外。夜なら行けるというのが現実です。その場合は排便計画といい、週末などに薬を飲んで何時間でお通じがあるかをみたうえで逆算して薬を飲む時間を決めるなどが効果的。排便の姿勢も、ロダンの「考える人」のように肘を膝につけて前かがみになり、足首は上へ曲げる。実は和式トイレは非常に排便しやすい姿勢になり、反対に洋式はその点では優れません。そして直腸は前方に向かい「く」の字に曲がっているので、理想の排便姿勢は前かがみ35度と言われています。


 便秘症はポピュラーな疾患ですが、血圧のコントロールにしても便秘症のコントロールをしなければトイレで脳出血や心疾患を起こす可能性もあり、慢性呼吸器疾患でも便秘症の治療を放置しているとトイレで低酸素発作を起こすこともあります。ただ刺激性下剤の安易な使用で腸管の強い収縮により腹痛に苦しみ、長期連用により耐性現象を来し必要な薬剤の量がさらに多くなる悪循環は避けましょう。刺激性下剤は基本的に連用する薬ではなく、レスキュー的な役割での使用が望ましいと言えます。そして最近は3種類の新しい薬も使えるようになりました。また「腸脳相関」といい、便秘と認知症やうつ病との関連も指摘されています。たかが便秘、されど便秘。侮るのは禁物といえましょう。



清風園診療所 澤田 名美枝 先生

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