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赤、ピンク、緑の区別がつきにくい色弱の人が、男の子の20人に1人はいます
色弱があり普通の人と色の見え方が違う人が、男性の20人に1人、女性の約3000人に1人います。1クラスに男子20人いたら、1人は色弱ということになります。みなさん色弱のことを隠している人が多く、一般の人はあまり関心がありません。原因は遺伝です。病気ではありませんが、改善することや治すことはできません。
現在の日本では、色弱の人の生活には多くの支障が起きています。2枚の写真を見比べてください。色弱の人の色の見え方と普通の人の見え方と、だいぶ違っているのがわかるかと思います。特に赤と緑は、茶色か、こげ茶色か、黒っぽく見えてしまい、区別がつきません。逆に、青と黄色と白は、普通の人と同じ様にちゃんと区別がつきます。
私たち人間は、赤青緑の3色しか見ていません。というより、見えていません。携帯もパソコンのディスプレイもテレビも、すべて赤青緑の小さな光の点の集まりでできています。試しにレンズで拡大して見てみてください。確認できます。
色弱でない人は、この3色をとても印象強く感じるため、どうしてもこの3色を使ってしまいます。特に赤。危ない、ストップ、大切、注意といった感情の時に、この赤を無意識のうちに使ってしまいます。もう1つは緑。安全、だいじょうぶ、いいよ、通れるよといった感情の時に使うことが多くなります。ところが、色弱の人にとっては、この赤と緑が最も区別のつかない色になってしまっているのです。
そこで、みなさんにお願いがあります。赤、ピンク、緑をなるべく使わないようにしてください。青、黄、白、黒を使って色の区別をするように習慣づけてください。そうすれば色弱の人でもちゃんと同じ様に見えて区別がつきます。
色弱ではない人が正常、色弱の人が異常とするのは、差別になりいけないことです。色弱ではない人が多数派、色弱の人が少数派なのです。日本は先進国の仲間入りをしなくてはいけません。だれでも不自由なく平等に生活できる環境、学校と社会をつくっていかなければいけません。
色弱でない多数派の人は、少数派の人に配慮して、赤、ピンク、緑を使わないで、文書や表やグラフやスライドを作成してほしい。赤、ピンク、緑のチョーク、マグネットは使わないようにしましょう。青、黄、白、黒を使ってください。どうしても赤を使いたい感情の時はオレンジを使いましょう。オレンジだったら色弱の人でも区別がつきます。赤の色鉛筆はなるべくやめて、オレンジにしましょう。
みなさんにお勧めのアプリと本があります。色のシミュレーターというアプリと、色弱の子どもがわかる本(カラーユニバーサルデザイン機構、岡部正隆監修)です。
アプリを使うと自分の携帯で、2枚の写真のようにものを見ることができ、自分が作った表とかが色弱の人でも区別できるかチェックできます。無料で手に入ります。
後者の本は、医師であり色弱でもある岡部先生が、自分の幼少時からの経験に基づいて、色弱の子どもにどう接していいか、わかりやすく漫画でかかれています。家族や近くに色弱の人がいたり、学校の先生をしている方は、ぜひ手に入れてください。
少数派の色弱の人でも、何不自由なく生活できる色覚バリアフリーを目指して、みんなで前進して行こうじゃありませんか。
椎名眼科医院・町田市立小・中学校 眼科校医 椎名 一雄 先生
(「学校保健」2021年10月12日号より転載)