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『コロナうつ』と『適応障害』について
近頃、『コロナうつ』という言葉をよく耳にしますが、決してコロナウイルスがうつ病を発症させるのではなく、コロナ禍による環境の変化が適応障害を発症させてしまうのです。
「適応」という日本語は一つですが、英語にすると大きく二つに分けられます。一つは『Adaptation』、こちらは自分の努力で環境に合わせようとする「適応」で、自らの意思で積極的に環境の変化を受け入れて適応していこうとすることで、適応後も最高の実力を発揮できる状態です。もう一つは『Adjustment』、こちらも「適応」と訳しますが、形だけの「適応」を表し、消極的な環境への対処で、取り繕うような「適応」です。このような「適応」を長続きさせることは大変困難です。
診断名にある「適応障害」は英語では『Adjustment Disorders』なので、後者の「適応」となります。前者の「適応」の方が理想的ですよね。つまり適応障害というのは、社会に適応できないのではなく、『ストレスに適応できない』ということなのです。
ストレスに気付くには、体の変化、心の変化、社会生活環境の変化など、『変化』を早く見つけることが最も重要で、普段の『自分自身』をよく知っておくことが大切です。そして、ストレスに対処するために必要なスキルを医療用語では、【ストレスコーピング】と言います。
学校や職場、現代においてストレスと無縁でいることは難しいですが、いち早く自分のストレス反応に気付くことで原因(ストレッサー)の除去に取り組むことができ、更に対処する方法(コーピング)を行うことで、ストレスをコントロールすることができるようになります。
新型コロナウイルスの広がりと共に、皆さんの学校・職場・家庭内などでの急激な環境変化に適応することは難しいことだとは思いますが、上手くストレスと向き合い共に乗り越えていきましょう。
あさひの丘メンタルクリニック 佐藤 政史 先生