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ごぞんじですか?ディスレクシア(発達性読み書き障害)
ディスレクシアという「生まれつき読み書きが苦手な人」がいることをごぞんじですか?
知能には問題がないのに文字の読み書きだけが苦手な人で、日本では人口の5~8%くらいいると言われていてめずらしい事ではないのです。
読み書き以外には問題がないので、工夫すれば人並み以上の活躍ができる人も多く、有名人にもたくさんいるそうです。
俳優のトム・クルーズ、映画監督のスティーブン・スピルバーグもディスレクシアだそうです。
市内の小中学生の皆さんの中にもディスレクシアの人は必ずいます。
ただ、ディスレクシアの方はこの文章は読めないことが多いでしょう。
周囲の大人や友達が気づいてあげないと、一生困難を抱えて生きていかねばなりません。
おとなになってようやく自分がディスレクシアだと気づいて、長いあいだ苦しみ悩んできた事にくやしい思いをする方も多いようです。
「自分は読み書きもできないダメな人間だ」「自分は頭が悪いんだ、バカなんだ」と思い込み悩んで、人にバレないようにしようと必死に生活している方もきっといるはずです。
ディスレクシアの方が本来の自分の能力を発揮して生きていくためには、生きやすくしてあげるためには、まず周囲が気づいてあげることが重要です。
・がんばっているのにうまく字が読めない
・一生懸命書いているのに字がとても下手
・話すとき、聞くときは全く普通なのに文章が読めない、書けない
・幼児期には文字に興味がないし、覚えようとしない
などが気になるお子さまでは、ディスレクシアではないか?と一度は考えてあげてください。
ディスレクシアの程度にも個人差があり、程度はさまざまです。
ご家庭や学校で、会話や聞き取りでの能力に較べて読み書きの能力の落差が大きいな、と少しでも感じたら気を付けてあげてください。
町田市医師会でも町田市教育センターとともにディスレクシアのお子さまへの支援の取り組みを始めたところです。
ディスレクシアかも、と感じたら学校の先生や町田市教育センター、かかりつけの小児科医にご相談ください。
対応方法は一人ひとり異なり、町田市内でも医療・教育・療育の現場で少しずつ対応する側の力を高める努力を始めたばかりなのが現状です。
訓練をすることで少しずつ読み書き能力を高める方法も研究されています。
また、マイナス面も心配される「ギガスクール構想」ですが、1人1台提供されるパソコン、クロームブックなどを活用することで、ディスレクシアの子どもたちが生活、学習でとても楽になることがあります。
例えば、
・文章をスマホで映してパソコンで文字を拡大表示すると読みやすくなる事がある
・写真で取り込んで文章の読み上げソフトで聞き取る
・文章を読み上げてくれるデジタル教科書の活用(マルチメディアデイジー教科書)
などです。
周囲の大人たちの理解と支援で、ディスレクシアのお子さまが不要な苦しみを味わうことなく、持てる力を十分に発揮して行けるよう、われわれ小児科医、医師会も努力してまいります。
はやしクリニック・忠生第三小学校 内科校医 林 泉彦 先生
(「学校保健」2022年10月4日号より転載)