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スポーツ選手の風邪薬
スポーツ選手が、試合の直前に風邪薬を服用すると、ドーピング違反となる場合があります。ドーピングというと、筋肉増強剤の男性ホルモンが有名ですが、市販の風邪薬にも禁止薬物が含まれている場合があります。風邪薬には、副作用である眠気を抑えるために、興奮剤であるエフェドリンという成分が入っている場合があり、これが禁止されています。カフェインが入っている場合もありますが、コーヒーとして飲用されるため、これは禁止されていません。
気管支拡張剤、気管支喘息薬であるベータ2作用薬も禁止されていますが、喘息発作のスプレーなどは、少量なら認められる薬もあります。喘息治療薬として使用している場合は、あらかじめTUE(治療目的使用に係る除外措置)申請して許可を得ておく必要があります。
また、漢方薬も基本的に禁止薬物が入っている事が多く、よく使用される葛根湯、小青竜湯には、麻黄(エフェドリン類)が入っており、禁止されています。胃腸薬のホミカや半夏も禁止薬物が入っています。
では、何を服用したら良いのでしょうか? 鎮痛解熱剤のアセトアミノフェン、イププロフェン、ロキソニン等は、使用可能です。抗生物質も使用できますし、インフルエンザ治療薬(タミフル等)も大丈夫です。咳止めのコデインも使用可能ですが、モルヒネ等の麻薬は禁止されています。抗ヒスタミン剤、アレルギー薬も使用できますが、市販薬には禁止物質を含む配合剤があり、注意が必要です。うがい薬のイソジン等も使用可能です。
風邪薬は、対症療法が主体なので、症状によって、禁止薬物を含まない薬を選んで、服用すべきです。また、競技によっては、興奮剤ではなく、鎮静剤、アルコールも禁止される場合があります。詳細は、The World Anti-Doping Agency(WADA)、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)、各競技団体のホームページを参照して、公正な競技をして頂きたいと思います。
参考資料:
日本薬剤師会ほか『ドーピング防止ガイドブック』2013年版
鶴川レディースクリニック 中林 豊 先生