身近な医療情報
子宮頚がんは予防できます
近年のがん治療は、急速に進歩しておりますが、子宮頚がんだけは、死亡率が上昇しています。これは、20~39歳の罹患が増加している一方で、若い方の検診率が低いためと思われます。
子宮頚がんは、ヒトパピローマウィルス(HPV)の感染によっておこります。正常な細胞が、異形成という前癌状態に変化し、さらに持続的な感染により、上皮内がん→浸潤がんへと進行していきます。子宮頚がん検診では、異形成の段階で発見できるため、がんになる前から見つけられます。他のがん検診の多くは、がんにならないと判らないのと比べ、格段の違いがあります。ただ行政による他のがん検診が通常40歳以上のため、子宮頚がん検診が、20歳から受けられるにも関わらず、十分周知されていないのが、実情です。若いうちから、ぜひ積極的に、子宮頚がん検診を受けて頂きたいと思います。
子宮頚がん予防のもう一つの柱は、ワクチンです。現在、2種類ありますが、いずれもHPV16型と18型に対するワクチンです。HPVには、多くの型がありますが、この2つの型が極悪と言われ、子宮頚がんの60%がこの2つによるものです。従って、ワクチン接種により、子宮頚がんの少なくとも6割は減少すると期待されています。ワクチンの有効性に関しては、諸外国の報告から、明らかに前がん病変の減少が示されており、さらに他の型も含めたHPV保有率まで減少しています。
日本では、2013年4月に定期接種となりましたが、接種後の有害事象(複合性局所疼痛症候群、体位性起立性頻拍症候群、自己免疫疾患)が、表面化したため、同年6月から接種の勧奨が控えられてきました。しかし、その後の検証で、有害事象は心身の反応が原因で発生したこと、さらにそのほとんどが回復したことが示され、診療体制、相談体制、専門機関が全国で整備されました。不幸にして回復しない重度の健康被害の方は、10万接種あたり2人でしたが、この率は未接種の一般集団の発生率と差が無いことが確認されました。さらに未回復の健康被害の方の救済についても開始されました。
以上の状況を考えると、日本もHPVワクチンを接種し、さらに若いうちから検診をすべきと考えるのが、当然と思われます。しかし、実際に接種を受けようとしても、有害事象の方の症状をテレビ報道等で見ると、躊躇せざるを得ないのも事実です。有害事象予防には、心身の反応をいかに抑えるかが重要です。そのポイントは、ワクチンのメリットを良く説明し、本人に『自ら予防のために接種を受ける』という強い意志を持って受けてもらう事です。また、HPV感染は、性的接触によっておこるため、性的経験前に接種される事が推奨されますが、心身の虚弱な方は、接種時期を遅めにするとか工夫すると、有害事象を減らせると考えます。
子宮頚がん予防の二本柱は、ワクチンと検診です。若いうちから、この点を理解していただき、不幸な事態にならないように行動して頂きたいと思います。
鶴川レディースクリニック 中林 豊 先生